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<連載>学習塾のデジタル化 第6回 ICTシステム導入成功には、「システム思考」による課題整理が重要

<連載>学習塾のデジタル化 第6回 ICTシステム導入成功には、「システム思考」による課題整理が重要

学びの場の価値を高めるプラットフォームを提供する、
FLENS(フレンズ)株式会社の社長・大生 隆洋のコラムです。
ICTを活用し、教育の新たな価値を生み出すことに挑む、その想いを語っていきます。


「学習塾のデジタル化」というテーマで寄稿させていただきましたが、6回目の本稿で最終回となります。
ICT ツールの導入には、その前提として業務がシステム化されていることが重要であると述べてきました。
業務のシステム化とは具体的にどのように考えると良いかを一緒に考えたいと思います。

ピーター・センゲの「学習する組織」の中で紹介されているシステム思考という考え方があります。
このシステム思考というのは、現象の奥に潜む構造(システム)を可視化し、それを効果的に変える手段を明らかにする考え方です。

学習塾での具体的な例で考えてみましょう。
成績向上ができていない先生がいるという課題があるとします。授業準備はできているか?
わかりやすい授業ができているか? 宿題チェックをしているか? ということに注目しがちです。
そして先生の状況を確認して、指導したり管理したりするという施策が想像できます。
もちろん、これらが間違いであるとは思いませんが、課題解決に対して、効果的かどうかは別途検討が必要だと思います。

一方、成績向上をシステム思考で捉えると、一例として以下のように因果関係を整理することができます。
① 塾として対象とする生徒層と成果目標の明確化
② 生徒層や目標に対して最適化したカリキュラムの設計
③ 講師への自社の方針・カリキュラムの徹底
④ 自社のターゲットに合致した生徒募集
⑤ 方針に沿ったカリキュラムの提供
⑥ 成果の検証と評価
⑦ 市場への広告宣伝

次に、これらの要因を1つひとつ丁寧に検証していきます。
例えば①の対象とする生徒層や成果目標は明確化されているかを考えます。
校舎が受け入れる生徒の学力層の基準は決まっているか。受け入れる中学校は決まっているか。
集団指導では、ここが曖昧だとまず成績を上げるのは不可能です。

また、成績向上は何をどのくらい上げるのか決まっているか。
例えば学校成績は、定期試験の得点なのか、それとも内申点なのか。
定期試験ならば、目標点は決まっているか、または何点アップするかが決まっているか。
このようにターゲットとなる生徒層や目標が明確化されていない状況では、それ以降の施策が機能しなく、成果が出ているかどうかの検証や評価ができず、効果的な施策が決定できないと思います。

同じように、②以降についても施策が明確になっているか、因果関係で整合性が取れているかを考え、また施策の実証状況などを確認します。
システム思考で捉えると、成績が上がっていないという課題に対し、構造(システム)的に課題を明確にすることができます。

次に、因果関係を明確化できると、最も効果的に課題解決できるところを考えるようにします。
「てこの原理」が効くところということで、レバレッジという言い方をすることが多いです。
レバレッジが効くとは、小さな力で、大きな成果を得られるということです。

成績を上げるという1つの課題をとっても、予習ノートを作る、教材研究をする、大きな声で授業する、宿題のチェックをするなどなど、施策は無限です。
その中から、システム思考で因果関係を整理し、レバレッジが効く施策はどこかという視点で課題に向き合うとシステム思考ができるようになると思います。

成績向上を例としてシステム思考の有用性を述べましたが、生徒募集や業務の効率化、講師採用など様々な領域の課題を、システムとして捉えることができます。
システムの整合性が取れているか、システムを構成する要因は適切に機能しているか、問題がある要因の中でレバレッジが効く要因は何かを考える習慣ができると、強い組織になると思います。

システム思考の組織では、ICT システムの導入の成功確率が高くなるのは必然です。
本寄稿でのテーマであった、ICT システムの導入には業務のシステム化が必要であるということに共感いただけると幸いです。

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この記事の投稿者
FLENS株式会社 代表取締役社長 大生 隆洋
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『志有れば、道、自ら開く』『人生に主体性を!』をテーマに教育業界で活動する。 中学時代は新聞配達をしながら進学塾に通い、15歳で親元を離れ九州から上京する。大手学習塾で18年間勤務。リアルタイム対戦型学習サービス「FLENS」を開発し、2012年9月にスピンオフして、FLENS株式会社を設立。現在は同社代表取締役社長。グロービスMBA。

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