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<連載>学習塾のデジタル化 第3回 ICTシステム導入検討の 「プロジェクトリーダー」は誰が担うべきか

<連載>学習塾のデジタル化 第3回 ICTシステム導入検討の 「プロジェクトリーダー」は誰が担うべきか

学びの場の価値を高めるプラットフォームを提供する、
 FLENS(フレンズ)株式会社の社長・大生 隆洋のコラムです。
ICTを活用し、教育の新たな価値を生み出すことに挑む、その想いを語っていきます。



 ICT システムの導入において、プロジェクトチームのリーダーは誰が担うべきでしょうか。
情報システム部門でしょうか、現場の事業責任者でしょうか、実際にシステムを運用する部門の責任者でしょうか。
もちろん導入するシステムの規模や影響範囲で変わる可能性がありますが、ほとんどの場合、経営トップ、具体的には社長がプロジェクトリーダーになるべきだと考えます。

 本寄稿の第1回目で述べているように、ICT 化/DX は、組織変革を最終的な到達点においており、
ICT システム導入にはその可能性が秘められています。よってICT 化/DXの推進は経営トップが深くかかわることが成功のポイントです。

 社長がプロジェクトリーダーになることで、ICT システム導入が経営目標と一体化し、重視する要素、重視しない要素が明確になり、投資効率が最適化しやすい構造になります。
反対に、社長以外がプロジェクトリーダーになると、部分最適に陥りやすくなり、知らないうちに経営が意図しない方向に組織文化が誘導される可能性があります。

 例えば、生徒の定期テスト結果を現在は校舎で生徒から直接マンパワーで回収しているが、回収までの期間が長く回収率も低いという課題を教務部が持っていた場合を考えてみます。
業務効率化と回収率向上を目的にWEB 回収システムを教務部主導で導入する場合、どのようなシステムになりそうでしょうか。
おそらく定期テストや学校成績のデータの回収ができれば十分でしょうから、それらの機能がメインとなります。答案の画像も回収できるようにするかもしれません。回収したデータを分析で活用しやすいように工夫もされています。機能としては十分なように見えます。

 この成績回収のWEB システムを導入するとどのような組織変化が起こる可能性があるでしょうか。
 今までは定期テスト後、子どもたちが「先生、数学○点だったよ」と報告に来たり、なかなか話してくれない生徒の報告結果を見て、褒めたり励ましたりという光景があったと思います。
生徒の得点に関心の高い先生も、そこまで関心の高くない先生も「成績回収業務」を通じて、最低限のコミュニケーションは担保されていたと思います。

 一方で成績回収システムを導入した場合、現場での「成績回収業務」は大幅に軽減されます。効率化して回収率も上がると思います。一方で、先生に積極的に話さない生徒とのコミュニケーションの機会が減ることや、生徒へのかかわりが少ない先生がさらにかかわる機会が減る可能性があることも予測されます。

 教務部主導でシステム導入を進めた場合、このような重要な業務フローが大きく変化する点を見落とす危険性があると思います。これはICT システムを導入することで組織文化が変革される可能性があることを認識して、経営トップ自らがリーダーとなり、意思決定していく必要があると思います。

 先ほどの例であれば、「成績回収業務」に関連したコミュニケーションが減ることに対して、減らないように声掛け等を業務として整備することも考えられます。
一方で、今までのコミュニケーションは偶発的で抜け漏れも多かったので、回収ついでのコミュニケーションは廃止して、WEBシステムでリアルタイムに回収したデータに基づいて、声掛けする生徒の優先順位を決めて、効率的・効果的にコミュニケーションを行うように業務変革を通じて組織文化を変革することもできます。

 このようにICT システムには、組織文化を変革する可能性があります。
便利になり効率化される面もあれば、明確化されてなかったが重要だった文化が知らないうちに失われてしまう可能性もあります。
一方で現場講師が大切だとこだわっていたが、実はそれほど効率的ではなかった業務を改善するきっかけにもなり得ます。

 DX とはデジタル化やICT 化を通じて組織変革を目指すことです。DX は経営課題の中核であり、それを経営トップが検討段階から深く関与して意思決定することは必然ともいえます。

出典:「塾と教育」2023年6月号

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この記事の投稿者
FLENS株式会社 代表取締役社長 大生 隆洋
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『志有れば、道、自ら開く』『人生に主体性を!』をテーマに教育業界で活動する。 中学時代は新聞配達をしながら進学塾に通い、15歳で親元を離れ九州から上京する。大手学習塾で18年間勤務。リアルタイム対戦型学習サービス「FLENS」を開発し、2012年9月にスピンオフして、FLENS株式会社を設立。現在は同社代表取締役社長。グロービスMBA。

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