
AIとの対話が変える塾の学び: 「ググる」から「ジェネる」の時代へ

学びの場の価値を高めるプラットフォームを提供する、
FLENS(フレンズ)株式会社の社長・大生 隆洋のコラムです。
ICTを活用し、教育の新たな価値を生み出すことに挑む、その想いを語っていきます。
※本記事は『塾と教育2025年2月号』に掲載されたものと同内容です。記事はこちらからご覧いただけます。
何かを調べたいときや疑問に思ったとき、「Google先生に聞いてみよう」や「ググる」といった言葉を使って検索エンジンで調べることが一般的になっています。現代は情報が大量に生産される「情報爆発」の時代であり、膨大なデータの中から必要な情報を効率的に探すため、Googleなどの検索エンジンを日々活用していると思います。「ググる」という言葉は、若者から年配の方まで幅広い世代で使われ、検索行為そのものを象徴する文化的な表現となり、社会文化的現象として定着しています。
「ググる」という行動の定着は、「自分で調べる」ことを奨励する文化の定着とも言えます。以前であれば、わからないことがあれば友だちや先生など知っていそうな他の人に聞くことが一般的でしたが、「それ、ググってみたら?」や「Google先生に聞いてみたら?」など、柔らかく自分で調べることを促す言葉としても機能しています。わからないことがあれば、まずは自力で調べて情報を集め、問題を解決しようとする習慣は、現代社会で広く共有されているように感じます。
一方で、膨大な検索結果の中から適切な情報を選択するには、高いスキルと多くの時間が必要ですし、情報の真偽を精査する能力も求められます。検索ワードが的確でなく、欲しい情報を得るためにキーワードを何度も試行錯誤した経験がある方も多いのではないでしょうか。また、情報の検索には適していますが、情報の整理や深い洞察には限界があり、その部分は自力で行う必要があります。当然、自分が調べた情報以上の情報にはアクセスできないという課題も隠れた問題として存在しています。
2022年12月にOpenAIが公開した「ChatGPT」は瞬く間に世界中にユーザーを広げました。わずか2年ほど前のことです。その後、テキスト生成にとどまらず、AIが画像や音声を生成するサービスが次々にリリースされ、生成AI(ジェネレーティブAI)が注目を集めています。広告の動画、音楽、ナレーションをすべて生成AIで作成するという話も日常的になりつつあります。
ChatGPTに代表されるテキスト生成AIでは、単に「ググる」と同じように検索すると誤った情報が表示されることもありますが、考えたいことを人と対話するように入力してみると、さまざまな切り口で論点を整理することができます。自分がさらに深掘りしたい内容に疑問を感じた場合、さらに対話形式で質問を重ねると、より具体的な情報を得ることができます。その中で気になる情報があれば、従来の検索エンジンを活用して情報の正確性を確認することも可能です。生成AIを活用することで、「ググる」では不向きだった情報整理や課題解決に必要な深い洞察を得ることができるようになります。
今後、「わからないことがあったらまずはググる」から、「まずは生成AIと対話してみる」という「まずはジェネる」という現象が定着するのではないかと思います。
学習現場での活用には大きな可能性があると感じます。従来の先生への質問では、先生の時間を気にして、もっと質問したいのに途中で納得したり、先生に変に思われたくなくて質問を躊躇したりすることがあると思います。一方、「ジェネる」学習は、自分のペースで気兼ねなく、好奇心の赴くまま質問できるので、納得いくまでとことん対話することができます。こうした環境において、講師の役割は、AIとの対話をサポートし、疑問をどう問いかけるかを子どもと一緒に考えることになるかもしれません。
「ジェネる」は、自分で考えるきっかけを与えてくれる可能性も大いにあります。