デジタルネイティブ世代が保護者になることを見据えた学習塾のインフラ整備
学びの場の価値を高めるプラットフォームを提供する、
FLENS(フレンズ)株式会社の社長・大生 隆洋のコラムです。
ICTを活用し、教育の新たな価値を生み出すことに挑む、その想いを語っていきます。
モノのインターネット(IoT)で、エアコンや家電を遠隔から操作できたり、電車やバスの運行状況がリアルタイムに把握できたり、荷物の配送状況が分かったりなど様々な便利なサービスが生み出されています。ますますスマホは生活必需品になり、生活のあらゆる場面で人はスマホと接触することになります。これからはモノのみならず、ヒトが常にインターネットに接続されることを意味し、「ヒトのインターネット(IoH:Internet of Human)」化が進みます。IoHにより、ヒトの位置や行動、生体情報、感情、興味関心などがビッグデータとなり、ヒトの行動の支援や、高精度なマーケティングが可能となります。
私たちが日々利用しているサービスは、世界中のユーザの利用データをもとにAIが分析・判断して最適なコンテンツや情報や行動を提案します。デジタルネイティブでない世代はこのような現状を驚きとして捉えるかもしれません。しかし、この環境が当然として育ったデジタルネイティブは、そうではありません。例えば、動画サイトを見るときも、移ろいゆく興味関心に合わせて阿吽の呼吸で、いやそれ以上の快適さで他の動画をお勧めしてくれます。このようなサービスに慣れたユーザは、ビッグデータを活用していない従来通りの人の経験や感性のみで提供される情報やサービスに物足りなさを感じるのではないかと思います。
学習塾業界では、タブレットやスマホを使ったサービスが部分的ではありますが活用され始めています。しかし、学習塾が提供している教育サービスの中核のほとんどは、人の職人的な経験や感性にその多くを頼っているように思います。例えば、宿題ノートのチェックから子どもの家庭学習の様子を推測する。例えば、子どもの表情などから授業の理解度やモチベーションを読みとる。例えば、数回の模試の結果と日々の授業の様子から進路指導を行うなど、すべてを先生方の能力に依存しています。
私は教育現場においては、どんなにデジタル化が進んでも、こどもや保護者と向き合う先生の役割の大切さは変わらないと考えています。しかし、一方で、個別最適化されたサービスを当たり前のように享受しているデジタルネイティブが親世代になり、従来の学習サービスを提供し続ける学習塾には満足しないばかりか、不安感や不信感を抱くようになることは、そう遠くない未来に来るように思います。
私たちは近い将来に備え、「先生の経験や感性」と「デジタル化で蓄積したデータ」を融合させるインフラ整備を推進しなければならないと考えます。授業の理解度や家庭学習の状況、学校成績や学習目標、生徒や保護者とのコミュニケーション、日々の授業、先生の行動などの様々なデータを集約できるプラットフォームを準備する必要があります。IoHを活用し、これらをインターネットと接続する「教育のインターネット(IoE:Internet of Education)」を推進することで、カリキュラムや授業・教材、進路指導の精度が上がるだけではなく、先生の生徒や保護者対応の品質も向上し、「学びの場」の価値はさらに高まり、デジタルネイティブ世代のニーズを捉えることができると考えます。