「5G」時代の学習塾に秘められた可能性
学びの場の価値を高めるプラットフォームを提供する、
FLENS(フレンズ)株式会社の社長・大生 隆洋のコラムです。
ICTを活用し、教育の新たな価値を生み出すことに挑む、その想いを語っていきます。
昨年12月24日に厚生労働省から人口動態統計の年間推計が公表されました。それによると、2019年の出生数は86万4000人となり、明治32年の調査開始以来、最小となったようです。
学習塾のメインターゲットの10歳~19歳人口合計を見ると、2019年時点は1,115万人になります。10年前の2009年は1,204万人ですので、この10年で7.4%減少したことになります。ちなみに私が塾講師として駆け出しだった頃の1999年は、1,434万人ですので、そのころと今を比べると22%減となっております。さらに、学習塾黎明期、私が中学生で学習塾に通っていた1989年は1,894万人でしたので、30年で41%の人口が失われたことになります。
現在の0歳~9歳の人口は990万人なので、10年後の2029年のメインターゲットは今よりも125万人少なく、11%の対象人口が失われることになります。対象人口減少は、受験指導を中心とした学習塾においては単に対象顧客が減るという問題にとどまらず、受験競争の緩和による通塾率の減少や通塾期間の短縮など、その影響は乗数的になります。今のままでは厳しいということは論を俟ちません。
一方、2020年は春には次世代ネットワーク「5G」(第5世代移動通信システム)サービスが開始される予定で、新たなビジデスチャンスが生まれるのではと期待されております。
過去を振り返ると、80~90年代の「1G」では自動車電話や移動携帯電話サービスの登場、90年代に入ると「2G」のデジタル化によりメールなどのデータ通信サービスが登場します。さらに、2000年からは、初の国際標準規格として「3G」が登場します。NTTドコモのiモードのような画期的なサービスが誕生し、メールやインターネット閲覧など日常的に携帯端末を使い始めるようになります。2010年代前半に登場したスマートフォン向けの「4G」の登場により、スマホゲームや動画などのリッチコンテンツなど、様々なサービスが登場しました。このようにおよそ10年ごとに通信規格が更新され、そのたびに、サービスが生み出され社会に大きなインパクトを及ぼしてきました。「5G」は、すべての端末とすべてのアプリケーションのための通信規格として注目されていて、過去同様、社会を変革する画期的なサービスが生まれるのではないかと期待されております。
学習塾業界においては、少子化による既存マーケットの急激な縮小は避けられません。一方で、「5G」の登場で、学習を取り巻く環境が激変する可能性があります。
「5G」により、人間が実質的に常時インターネットに接続状態になると思います。つまり、現在のように人が自分の自由意志でインターネットに接続するのではなく、自分の意志に関わらずどこにいても誰からでもアクセスされ、そのアクセスを逃れるのが困難な時代になるのではと思います。もし、そのような時代が来るとすると、インターネットに最初に接触する年代の子どもを顧客にもつ学習塾は途方もない可能性を秘めていると考えるのです。