サブスクモデルに学習塾の飛躍の可能性を探る
学びの場の価値を高めるプラットフォームを提供する、
FLENS(フレンズ)株式会社の社長・大生 隆洋のコラムです。
ICTを活用し、教育の新たな価値を生み出すことに挑む、その想いを語っていきます。
以前、月額6,800円で高級バッグを借り放題できる「ラクサス」の記事を目にし、感動を覚えました。バッグのレンタルサービス自体は珍しくありませんが、使い放題にした点が新しいと思います。レンタルには返却しなければならないという義務が生じ、この義務は人にある種の憂鬱さを感じさせます。また、レンタルする商品を選ぶ際に他のサイトや比較サイトを見てから損をしないようにレンタルするものを選んでいる人も多いと思います。つまり、選ぶのにも苦しみが伴うという事です。「ラクサス」は、返却義務をなくし、選ぶ苦しみから解放するために月額定額制に辿りついたとのことです。1万8000人いる優良会員の平均継続率は95%で、登録後9カ月を経過した会員の継続率は98%にもなるとのことである。すさまじい数字だと思います。
月額定額制のビジネスモデルに興味を持ち、意識していろいろなサービスを見ていると、けやき坂46(現日向坂46)が「ファッションもサブスクへ」と唱和する「MECHAKARI」のCMに目が止まりました。
「MECHAKARI」のサービスは、月額5,800円で洋服が借り放題、返却期限がなく何度でも借り換えられる。気に入った洋服は割引価格で買い取り可能で、利用済みの洋服はクリーニング不要でそのまま返却できるという、「ラクサス」と同じビジネスモデルです。
サブスクとは、サブスクリプション(定額制)のことです。このビジネスもでるに興味を惹かれたので昨年10月に出版された『サブスクリプション』(ティエン・ツォ著)を読んでみました。
書籍の中の事例でAdobe社があります。2011年11月のAdobe(アドビ)がソフトのパッケージ販売からライセンス事業への転換は記憶に新しい方もいるのではないでしょうか。2011年当時、Adobe社が売上34億ドル粗利益率97%の優秀なビジネスモデルからの転換を決断した背景には、顧客数が伸びない中で、商品単価・顧客単価を上げることで成長をしていたことと、顧客からの要望に対し18~24カ月周期での製品アップデートでは追いつけなくなったことにあるとのことです。
また最近では、自社で開発した基幹系情報システム(ERP)を多額の費用をかけてアップデートしたり、新規で独自で開発したりするのは、敬遠される傾向があるようです。理由は安くて魅力的なSaaSモデルのソフトウェアが世の中に多数あり、価格的にも品質的にも自社で開発するのが割に合わなくなっているようです。
最近のニュースで、トヨタが2019年から毎月定額料金で複数の車を乗り変えられるサービスを展開するとありました。返却期限がなく、選ぶ苦しみに時間もかけなくてよいサブスクモデルです。従来のリースモデルは特定の自動車に顧客を縛り付けるモデルでしたが、サブスクモデルでは継続的に利用することを重視しています。
今注目されているサブスクモデルは、従来のデジタルサービスのサブスク化にとどまらず、鞄や自動車など製品にまでサブスク化が広がっていることにあります。著書では「すべてのものはサブスク化できる」と述べています。つまり、製品が提供するサービスレベルについて契約をする発想で、製品を売るのではなく、結果を売る発送ということです。
サブスク化の重要な点は、「すべての発想を、製品からではなく顧客から得ている」点にあり、それを支えているのは顧客の利用状況や顧客ごとのニーズなどをデジタルサービスを介して収集している点にあります。そして、基本的に販売して終了の従来のモデルから、顧客との良好な関係を維持し利用し続けてもらって初めて利益が出るサブスクモデルへの転換が重要だと思います。
学習塾サービスでも大きなヒントがあるように思います。