飽きる問題
学びの場の価値を高めるプラットフォームを提供する、
FLENS(フレンズ)株式会社の社長・大生 隆洋のコラムです。
ICTを活用し、教育の新たな価値を生み出すことに挑む、その想いを語っていきます。
小学生~中学生のタブレットを活用した学習サービスに携わるようになり不思議なことに気付いた。
eラーニングにおいては、いかに工夫して飽きないようにするのが大切ということを多くの方からアドバイスを頂いた。具体的には、子どもたちが好きそうなキャラクターがいたり、イベントやゲームができたり、ストーリー仕立てになっていたりというのが必要と言われる。
私が子どもと接していたとき、子どもが勉強に飽きたらどうしようということを特段、意識したことがなかった。また、先生同士の会話で、飽きない工夫を真剣に議論しているシーンを想像できない。しかし、eラーニングになると、途端に最重要課題になるのはなぜであろう。
そもそもeラーニングは、モチベーション(動機づけ)を前提とした思想がシステムのベースにあるように思う。eラーニングは、資格試験や語学習得など具体的な目標を持ちモチベーションが高いが、時間が制限されている社会人に「いつでも、どこでも」、「手軽に安く」「高度な知識」を提供することが価値の中心にある。
これを小学生や中学生の受験を直前に控えていない一般的な子どもを想定してみると、ほとんどの場合モチベーションは、学習に対する興味や関心、先生との相性、友達との関係などから形成される。小中学生の指導においてはモチベーションそのものが提供価値の中核にあるのではないかと思う。
つまり、そもそもeラーニングと小中学生の指導は、提供思想から異なるので、従来のeラーニングをベースに考えると、「飽きる、飽きない」問題と格闘する結果になるのではないかと思う。ここが、eラーニングが初等教育・中等教育でなかなか広がりきれなかった原因ではないかと思う。
多くの小学生が、「いつでもどこでも」「手軽に安く」「高度な知識」を求めていない。学習に対するモチベーション(動機づけ)を求めているように感じるのは、私だけだろうか。
ゆえに、「飽きる、飽きない」とう表面的な議論ではなく、教育のICTで、より効率良く高度にモチベーションを高められるかどうかが議論の中核に来なければ、教育の情報化は失敗してしまうのではないかと思う。