「やらない」から始める
学びの場の価値を高めるプラットフォームを提供する、
FLENS(フレンズ)株式会社の社長・大生 隆洋のコラムです。
ICTを活用し、教育の新たな価値を生み出すことに挑む、その想いを語っていきます。
学習塾の大切な役割に、進路指導がある。ただ、この進路指導は先生ごとにその価値観は大きく異なるが、私にとっては、私が先生という仕事をやる意義そのものがあると言っても過言ではない。
進路指導をしていると、驚くほどにほぼ全員が、中3になれば次は高校に行かなければならないと思っている。いや、そんなことも考えることなく、受験はいやだ、勉強はいやだと言っているこどもが多いのに気づかされる。
私の進路指導は大抵の場合、ここから始まる。
「高校に行かないという選択肢もあるし、全日制でなくても、仕事したり自分のやりたいことしたりしながら定時制や通信制という選択肢もある。日本以外の可能性もあるし、やりたいことがあるのなら、高校なんか行かずにその道を15歳から極めるという可能性がある。すごくいっぱいの可能性がある中で、あなたはなぜ、わざわざ高校受験をして高校に行きたいの?高校に行かない選択肢を選ぶのであれば、一緒に探すよ。」
という問いかけをする。こども達は、いかに合格するために勉強しなければならないかを説教されることに慣れているので、学習塾の先生としての私の問いに驚くが、いずれにせよ自分で納得できる答えを探してきてもらう。
数週間後に再度、進路面談でこどもなりに考えて、答えを出してくる。その答えは人それぞれであるが、印象的だった答えの1つが、「先生、いろいろ考えたけど、私はあまりにも世の中のことが分かっていないし、自分がどんな人間なのかもわかっていない。もっと勉強して、いろんな人に会って、世の中のこと、自分のことをもっと知りたい。だから高校も行くし、大学も行きたい。できればトップ校に行きたい。」と熱く語ってくれたことです。その子はその後、モーレツに勉強をしたし、くじけそうなときは、自分に言い聞かせるように、高校に行く目的を私に話してくれた。
私は、目の前にある課題や困難を乗り越えようとがむしゃらに(もしくは責任感・義務感に迫られて)突き進む前に、そもそもこの壁を乗り越えないという選択肢を置いた上で、それでもこの壁を自分が乗り越えるたいと思うのであれば、それを「自分で決意する」ことが大切だと思っている。自分で選択した以上、文句は言えないし、挑戦を辞める選択権も自分にある。人のせいにもできず厳しい道であるが、自分の人生を力強く生きるためには、必要なことだと、私は確信している。
「自分の人生は、自分で責任を持つ」そんな人になって欲しい、教育者としての私の夢です。