COLUMN社長コラム

リアルタイム対戦型学習サービスでこどもの学習意欲を高める「学習プラットフォーム」を展開する
FLENS(フレンズ)株式会社の社長・大生隆洋のコラムです。
「タブレット × ネットワーク × 教育」で教育の新たな価値の創造に挑む、その想いを語っていきます。

<連載>学習塾のデジタル化 第5回 ICTシステム導入の成功の秘訣は、数値に裏付けられた適切な目標設定

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ICT システムの導入において、重要なことは「目標を明確にすること」です。ICT システム導入の目標というと、どうしても壮大な目標を設定しがちですが、導入成功のためには具体的で明確に実現可能な目標を設定することが大切です。

目標設定のポイントは、本連載の第2回( 5月号) でも述べていますが、現在行っている業務の効率化に集中することです。今やれていない業務をICT システム導入によって、一気にできるようにしたいというのは、「壮大な」目標で、失敗する確率が増し、かつ導入まで期間や費用が莫大になります。

ICT システムの導入の目標設定は、プロジェクトの最も重要な意思決定です。目標設定が適切でないと、社内外の情報収集で適切な情報が拾えないことや、情報に振り回されることになりかねません。

目標設定で重要な視点は、以下の3点にあるように考えます。

(1)現在の業務の中で、生徒募集や成績向上、人材育成など明確に成果に直結していることが確実な業務で多くの社員や時間をかけているもの

(2)日々の業務の中で活用しているマネジメント指標の中で、速く指標が出ることで成果につながることが確実なもの

(3)人手を介すことでミスが頻発している業務で、顧客満足を大きく損なう可能性のある業務

まず(1)ですが、現場で行っているすべての業務は何らかの大なり小なり成果に貢献していますが、システム化の検討の際には、費用対効果をより具体的に計測することが求められます。

例えば、個別指導で指導報告書を紙に書いて、毎月郵送している業務を考えます。指導報告書は創業以来のサービスで、強みだと考えている。一方で、講師が手書きで書いているが字が汚い人がいたり、内容が薄かったりなどの問題も感じている。また毎月郵送を行っていたが、業務負担なので、数年前から2カ月に1回に変更していて、これをシステム化によって、解消したいという目標を設定したとしましょう。

この目標設定が適切かどうかを判断するためには、業務の成果への貢献度を計測する必要があります。この例だと数年前に報告書の郵送頻度を2カ月に1回に変更しているので、変更時どのくらいのクレームがあったのか。休退塾率や問い合わせ数に変化があったか、その他特筆すべき変化があったかなどを数値化します。仮にこの数値に大きな変化がなければ、指導報告書のデジタル化・システム化の優先順位は低いと判断できると思います。

貢献度が大きいと分かった場合、その業務に具体的にどのくらいの時間がかかっているか計測します。またデジタル化でどの程度業務時間が削減されそうかを見積もることで、得られる成果と削減できる業務から、システム導入の適切な目標設定が可能になります。

次に(2)ですが、経営を行っていく上で、問い合わせ状況や生徒数、休退塾数、授業満足度・理解度、宿題実施状況、欠席状況、小テスト実施状況、テスト結果分析など、無数のマネジメント指標が存在します。成功している多くの学習塾では、これらから重要指標を設定して、その限られた指標を全社員が徹底的にこだわって日々業務を取り組んでいます。例えば、この指標の入力・回収・分析に現在1カ月かかっているものを、3営業日に短縮できれば、成果が上がることが確実となります。この場合、システム導入の目標が適切に設定できると思います。

一方で「いろいろなデータがすぐ取り出せるようにする」ためにシステム導入をするというような曖昧な目標設定では、成功は難しいのではないでしょうか。

最後に(3)ですが、請求金額や個人情報の管理、成績の管理などに不適切な対応があると、退塾につながる可能性があります。これを防止するためにもシステム導入は有効になりますが、導入に際し重大事故の頻度を計測することは大切です。例えば、ある重大事故が年間50件程度で、それが原因で退塾に至る人数が10名程度ということが明確になれば、どの程度の費用や現場の負担をかけて解決すべきかという目標設定が可能になります。

まとめると、ICT システム導入を成功させるためには「全社的な定量データを踏まえて検討して、学習塾全体で合意形成された目標設定」が重要になると考えます。

出典:「塾と教育」2023年8月号

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